公演終了

主催公演

注目アーティスト

伊東信宏 プロデュース ピアニスト金澤攝(をさむ) ヒストリカル・コンサート「ショパンと親友たち」(*プレトーク15:40)

2013 12/7()

16:00開演

歴史に埋もれた作曲家・作品を欧州で発掘、蘇演に生涯を賭けるピアニストの「志」を聴く。

出演

金澤攝、鷲野彰子(以上ピアノ)
伊東信宏(プレトーク)

曲目

G・ロッシーニ=F・ヒラー:ウィリアム・テル序曲
F・ショパン:3つのノクターン 作品15
J・フォンタナ:バラード
C=V・アルカン:ルターのコラールによる即興曲 作品69
ほか(予定)

料金
公演終了

一般 ¥3,000 →友の会価格 ¥2,700

学生 ¥1,000(限定数・電話予約可・当ホールのみのお取り扱い)

<各種クレジットカード利用可>

主催 あいおいニッセイ同和損害保険(株) 
あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
協賛 鹿島建設(株)
助成 公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団
問い合わせ先 ザ・フェニックスホールチケットセンター
備考

後援:一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)

この公演では、一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)による録音が行われます

 


これまでのショパン研究においては、ジョルジュ・サンドをはじめ、音楽家以外の人々との関わりが主にクローズアップされて、音楽家同士の交流・影響関係について触れられた部分は極めて少なかった。2010年のショパン生誕200年を機として、ショパン周辺にいた音楽家たちの調査がようやくヨーロッパにおいて動き出した感がある。どのような天才も必ず時代と風土に組み込まれた歴史の流れの一部であると見るならば、当然その周囲を知らずして、本体を理解・認識することは無理があるだろう。
内気で限られた友人以外には心を開かなかったとされるショパンが信頼をよせた音楽家たちは何を書いていたのか。同世代の側近だったフォンタナ、ヒラー、アルカンという三人の作曲家に光を当て、それぞれの作品の魅力とショパンとの接点を探る試みである。

(金澤 攝)

 金澤攝さんは、ショパンやリストといった有名な作曲家たちと同時代に生きた、無数の作曲家たちの作品、今では世界の誰も見向きもしなくなったような楽譜を丹念に収集し、それを紹介するというユニークな活動を長年続けてきた、知る人ぞ知るピアニストであり、作曲家です。その仕事は、華やかな演奏家というよりも、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』で頭骨から淡々と古い夢を読み取る作業として描かれる「夢読み」を思わせます。今回の演奏会では、お話と演奏を通じて、大阪ではじめて本格的に金澤さんの仕事を紹介できることになりました。音楽史の見え方、聞こえ方が変わる演奏会になるはずです。

(伊東信宏 大阪大学教授=音楽学、あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール音楽アドバイザー)

『西洋音楽史』を問い直す、壮大な個人プロジェクト-。

 

 金澤攝さんの営みは、こう表現して良いだろう。19世紀・20世紀、主にフランス・ドイツ・イタリアで活躍した作曲家およそ570人を対象に、楽譜発掘・収集と研究、演奏作品としての検証と選択、そして蘇演に半生を捧げてきた。「音楽史は、一握りの天才によって作られてきたのではない」。金澤さんの言説にしばしば登場する文言である。例えば今ではシューマンやショパン、あるいはブラームスといった“大作曲家”の個性として理解されている事柄が、同時代の作曲家の作品を丹念に調べることで次第に相対化されていく。その際、手掛かりとするのは作品の献呈関係を端緒にあぶり出される作曲家相互の交友や師弟関係。彼らが共有した時代精神や音楽観、そして音楽的な特性が浮かび上がってくる。ヨーロッパ各地の図書館、出版社、古書店などを巡り、ヨーロッパの研究者たちでさえ忘却した、知られざる作曲家と作品を掘り起す作業は、既に30年に及ぶ。研究者、演奏家、音楽産業などが、なかば無意識に作り上げてきた「名曲史観」を問い直すこの営みは、本来、国際的な文化機関や研究機関が手掛けても不思議ではない類の、失われた「歴史のパズル」の復元である。極東・日本の地方都市、金沢にあって、独力で新境地を開拓する、稀有な志の持ち主。一方で自ら作曲も手掛け、研究者・演奏家・創作家という多面的な活動を紹介する。

*写真=自ら収集した楽譜を紹介する金澤攝さん(左)。右は、今回の公演をプロデュースする伊東信宏さん=2013年3月13日、金澤さん宅

 

出演者について

金澤攝(かなざわ・をさむ/ピアノ)
作曲家、ピアニスト、音楽史研究家。1959年石川県金沢市生まれ。3才からピアノと作曲を始め、中学卒業後渡仏。3年間をパリで学ぶ。1978年帰国、同年ヒンデミットピアノ全曲集をレコーディング(オーディオ・ラボ)。以後、作曲と共にピアニストとして、未知の名曲の探求・紹介を指針として活動を始める。1979年第7回ラ・ロシェル(メシアン)国際コンクール第2位(1位なし)、1985年第1回現代音楽コンクール審査委員長(園田高弘)奨励賞、1991年村松賞大賞、金沢市文化活動賞ほかを受賞。1989年よりアルカン選集シリーズ、19世紀ピアノ音楽発掘シリーズ、自作アルバム(エピック・ソニー)などのCDを発表。現在500名を超える作曲家の調査・演奏に関わる。管弦楽曲、室内楽曲、ピアノ曲を中心に100以上の自作曲がある。

鷲野彰子(わしの・あきこ/ピアノ)
大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻音楽コース卒業後、ニューヨーク州立大学パーチェス・カレッジ大学院修了。オランダ王立デン・ハーグ音楽院フォルテピアノ科卒業、ピアノ科・室内楽科修了。現在、福岡県立大学人間社会学部講師。19世紀初期にウィーンで活躍した二人の作曲家の作品を弾き比べた演奏会『シューベルトとヴォジーシェク』や、クラヴィコードとピアノを弾き比べると同時にラヴェルの《クープランの墓》からの数曲をクラヴィコードで弾くという新しい試みに挑戦した演奏会『クラヴィコードand/orピアノ』など、独自の視点で作品を捉えた演奏会を行っている。また韓国で発刊されている月刊誌『Music Friends』に2年以上、演奏法や作品分析、クラヴィコードやフォルテピアノなど多岐にわたるエッセイを執筆している。