11月29日(土) レクチャーコンサート プレ公演
東欧ジプシー音楽 身近に
掲載日:2008年10月14日
「フレイレフ・ジャンボリーのライブ風景」=金沢のジャズ喫茶
11月のレクチャーコンサート プレ公演に登場
フレイレフ・ジャンボリー代表 瀬戸 信行さん
11月29日(土)夕、ザ・フェニックスホールはライブハウスになる-。この日午後6時から、開催されるザ・フェニックスホールの主催公演は、レクチャーコンサート「ジプシー・ヴァイオリンの作り方―バルトーク・エネスク・ブラスバンド」。ハンガリーのバルトークとルーマニアのエネスク、20世紀を代表する2人の作曲家にスポットを当て、2人の対照をお話と生演奏で楽しみます。彼らの音楽の大切な「ルーツ」となったのが、ヨーロッパの流浪の民と言われるジプシー(ロマ族)の音楽。公演に先立ち、ホール入居ビル1階のアトリウムでこれらジプシー音楽を大阪の楽隊「フレイレフ・ジャンボリー」が奏でます。代表の瀬戸信行さんに、グループ結成の経緯や活動の様子を紹介してもらいます。
開場前 活気溢れるライブ 29日(土)午後5時スタート
1990年代中頃、私は当時住んでいた神戸の街で、1920〜1950年代のジャズに熱中していました。中でも、とりわけ音色に惹かれた楽器が、クラリネットです。古いジャズやクラシックでは今も花形なのに、現在の流行音楽(ロックやレゲエなど)では脚光を浴びられない、いわば斜陽楽器(?)ですが、私は、世界中の音楽の中から、クラリネットが活躍する音楽を探して聴くようになりました。
ブラジルのショーロ、カリブ海のBiguine(ビギン)…などを懸命に聴いたものです。そんな時に出会ったのが、ユダヤのクレズマー音楽と東欧のジプシー音楽。超絶技巧のテクニックに、鼻持ちならない臭い節回し(これ、褒め言葉なんです)、なんともいえない哀愁を帯びたメロディーの虜になり、たくさんのCDを買い集め、聴いていました。
好きが高じて、クラリネットを購入した私は、1995年の阪神淡路大震災を切っ掛けにサラリーマンを辞め、クラリネットが花形の職業である“ちんどん屋”の世界に飛び込みました。一日中、クラリネットを吹いて、お金儲けができる仕事をやりたかったのです。
この“ちんどん屋の音”というのも、クレズマーやジプシー音楽と同様、哀愁タップリの風情があります。また、どちらも冠婚葬祭、祝祭の場で活躍する職業というのも共通しています。
ちんどん稼業に就いて、なんとか独学でクラリネットを習得し、演歌や歌謡曲を中心に演奏するなか、トランペットを習い始めの兄と「バンドを作ろう!」と盛り上がり、クラリネットが花形のクレズマー音楽、そしてジプシー音楽のバンドをやってみることにしたのが、9年前のことです。
周辺の音楽仲間に声をかけ、大半のメンバーはクレズマーもジプシー音楽もよく知らないまま、クラリネット、トランペット、アコーディオン、テューバ、ドラムスの5名編成でフレイレフ・ジャンボリーを結成。生憎と全員が日本人だったもので、クレズマーやジプシーの楽曲を尊重しつつも、器用に民族性を無視し、あくまでも我流で演奏しています。
噂を聞きつけて、少しづつメンバーも増えていきました。サックス、ヴァイオリン、バンジョー、トロンボーンなど、集まったのは電気がいらないナマ楽器ばかりで、バンドというより“楽隊”という方が相応(ふさわ)しい気がします。
最近では、メンバーのオリジナル曲も演奏するようになり、厳密に“ジプシー楽隊”かと問われれば、それほどでもなかったりするのですが、かのジプシーたちも、放浪の果てに住みついた国の音楽を貪欲に取り込み、独自の演奏をしているので、そういった意味ではフレイレフ・ジャンボリーも“割とジプシー楽隊”なのかも知れません。
フットワークの軽い編成を活かして、梅田や三宮、京橋の路上にライブハウス、カフェなど、北は北海道、南は九州沖縄まで、できるだけナマの楽器の音色が伝わる場所で演奏しています。
今回のプレコンサートは、フレイレフ・ジャンボリーの最も得意とするロビー演奏です。お客様の手が届くくらい目の前で、ナマの楽器の音色を楽しんでください。東欧のジプシーたちに伝わる曲を、賑やかにお届けします。
喧(やかま)しい音には耳をふさいでください。小さな音には耳をすましてください。なんでしたら、近寄ってきてもらっても構いません。待ち合わせ場所に指定するのもステキではありませんか?「11月29日午後5時にザ・フェニックス・ホールのロビーで演奏してる楽隊のクラリネット吹きの横で待ってるわ!」
いらっしゃいませ。お待ちしております。
(せと・のぶゆき)
Freylekh Jamboree (ジプシー楽隊)
クレズマー(ユダヤ音楽)やジプシー(ロマ)の音楽を演奏する楽団。バンド名「Freylekh Jamboree(フレイレフ・ジャンボリー)」とは、東欧系ユダヤの言葉・イディッシュ語で“愉快なドンチャン騒ぎ”というような意味。クラリネット、ヴァイオリン、アコーディオンなどを中心とした、電気楽器を使わない楽器編成は、サーカスの楽隊や戦前のジャズ・バンドのようなノスタルジックなサウンドを連想させる。ちんどん屋、ジャズ、ロック、歌謡曲、ニューオリンズ、ラテン、ミュゼット、アイリッシュからクラシックまで、メンバー各自のバックグランドを活かした、形にとらわれない演奏とパフォーマンスで独特な雰囲気を創り出し、北は北海道、南は九州沖縄まで、日本各地の路上・イベント会場・ライブスペースを賑わしている。CD『クレズマの花は甘く咲く』『ロマンギャルド行進曲』『ニッポン・クレズマー』『電気★ジプシー』を発売。