作曲家・望月京さんインタビュー

「今井信子presents 今井信子(ヴィオラ)&御喜美江(アコーディオン)デュオ」公演で新作発表

掲載日:2012年12月6日

「世界観」示す創作こそ

2013年2月23日(土)、ザ・フェニックスホールが開く「今井信子(ヴィオラ)&御喜美江(アコーディオン)デュオ」で、ホールが新作を委嘱している作曲家が居る。望月京(みさと)さん。豊かなファンタジーと緻密な構成力で芥川賞、尾高賞といった日本を代表する作曲賞を受け、日欧の音楽祭で引っ張りだこの才媛である。福井の音楽祭で、お話を聴く機会を得た。

「作曲」という日本語は、感覚的な創造行為の印象が強い。欧米語の「作曲(Composition)」は「構成」と同じ意味だ。感覚だけでなく、多様な要素を意識的に組み合わせ、理論的説得力をもって作曲することが重んじられる。留学で学んだのがこのことだった。むろん技巧は重要だ。さらに、「なぜ」「何を」「誰に向けて書くのか」を念頭に創作するようになった。

日本での学生時代は、まだ目標が分からなかった。「音楽とは、作曲とは何か」。あれこれ考えながらも、学内で、自分だけのための音楽を書き、受け手の感じ方や、「誰が、いつ、どこで演奏するのか」などには無頓着だった。

転機は1990年の「秋吉台国際20世紀音楽セミナー&フェスティバル」(山口県の現代音楽祭)。作曲家・細川俊夫氏の「うつろひ」(笙とハープのための作品)を聴いた。沈静な音楽が、深く心に響いた。大学や日本の外で、様々な音楽観に触れたいと思うようになった。

パリで学び、作曲家として活動し始め、世界や社会との繋がりの中で自分の音楽を考えるようになった。フランスやドイツの作曲家の友人たちの多くにとって、音楽は批評精神の表れだ。私もまた、読書や議論を通して、文学、哲学、宗教、科学といった様々な観点から「環境」と「その中の自分」を知る。そして、自分が世界をどう見ているかを音楽で表現する。それは時には、世界と自己に向けた提言でもある。環境と自分を取り結ぶ、媒介としての音楽。それを、「音楽無しでも生きられる」と思っているような人々にも聴いてほしいと願うようになった。

ヴィオラとアコーディオンは、歴史背景も異なる珍しい取り合わせ。それぞれが得意とする「歌」の世界を、描いてみたい。楽器の表現の限界を探りながら、多くの人の心に響く音楽を生み出せたら、素晴らしい。ただ私は、締切が迫らないと書けないタイプ。構想を練っている今の時間が、一番楽しい(笑)。

  

取材協力:東京コンサーツ、武生国際音楽祭

写真=福井の「武生国際音楽祭」会場で(2012年8月)


■望月 京(もちづき・みさと)
東京出身。東京芸大・同大学院を経てパリ国立高等音楽院・同博士課程で作曲科、楽曲分析科を修了。室内楽から管弦楽まで幅広く創作、映像や舞台のための作品も。ザルツブルク、ヴェネツィア・ビエンナーレ、パリの秋、ワルシャワの秋、ダルムシュタット、ドナウエッシンゲンなどの音楽祭で自作が演奏されている。明治学院大准教授。趣味は料理。


今井信子presents「今井信子(ヴィオラ)&御喜美江(アコーディオン)デュオ」公演は、2013年2月23日(土)16時開演。プログラムはJ・S・バッハ「ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ 第1番 ト長調 BWV1027」、高橋悠治「白鳥が池を捨てるように」(1995)ほか、望月京(みさと)氏に委嘱した新作の初演がある。入場料4,000円(指定席)、学生1,000円(限定数。ホールチケットセンターのみのお取り扱い。)チケットのお求め、お問合せはザ・フェニックスホールチケットセンター(電話06-6363-7999 土・日・祝を除く平日10時~17時)。