当日券は15:00より販売いたします。
主催公演
レクチャーコンサート
伊東信宏 企画・構成 レクチャーコンサート
ピアノはいつピアノになったか?補遺「ドビュッシーとピアノの謎」
2016 1/23(土)
16:00開演
「フランスの作曲家」を標榜したドビュッシー。ある時期から愛用したピアノはドイツ製だった。その響き・音色、同時代人の証言などを基に印象主義の旗手の「創作の妙」を推理する
ドビュッシーのピアノ作品は、1904年を境にして劇的に変化をします。以前の作品はやや古典的な作風だったのが、以後は「印象派」といわれるような音の響きを聴かせるような作風になります。いったい何があったのか。この年に彼が新しいピアノを手に入れたことがわかっています。では、それは作風の変化と関係があるのでしょうか。あるとしたらそれはどのような関係でしょうか。実際にそのピアノを聴き、さまざまな証言、証拠を検証しながら、探って行きます。(椎名亮輔・同志社女子大学教授)
出演 | 椎名亮輔(講師:同志社女子大学教授) |
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曲目 | ▼ドビュッシー:ピアノのために、版画、喜びの島、映像第1集 |
座席 |
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料金
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一般 ¥3,000 → 友の会 ¥2,700 <各種クレジットカード利用可> |
発売日 | 2015年07月28日(火) |
主催 | あいおいニッセイ同和損害保険(株) あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール |
協力 | 鹿島建設(株) フォルテピアノ ヤマモトコレクション |
助成 | 公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団 |
問い合わせ先 | ザ・フェニックスホール チケットセンター 06-6363-7999 (平日10:00~17:00 / 土日祝 休業) |
備考 |
出演者について
「ピアノはいつピアノになったか?」補遺に寄せて
10年以上前に、ザ・フェニックスホールにおいて8回シリーズで開催した「ピアノはいつピアノになったか?」という一連のレクチャーコンサートがありました。これは、ピアノが誕生してから現代までの300年の歴史を、その時代の楽器とともに辿る、というもので、1700年頃のクリストーフォリの楽器、ベートーヴェンと1800年頃の楽器、ショパンとプレイエル、といったさまざまなトピックを取り上げて、贅沢な講師と演奏家をお迎えして開催でき、とても熱心な聴衆に恵まれました。ですが、8回だけではもちろん充分ではなく、ピアノとピアノ音楽の歴史を考えるうえで、本当は外すことのできない作曲家や楽器について、触れられないままになってしまい、宿題となっていました。
今回、ザ・フェニックスホールの20周年を機に、あのシリーズの補遺を企画しました。主題は「ドビュッシーとピアノ」。ドビュッシーは、もちろんピアノ音楽に新しい局面を開拓した作曲家であり、フランスのピアノももちろん愛用していたようですが、意外なのはドイツのブリュートナーという楽器と縁が深かった、というところです。アリコートと呼ばれる共鳴弦を備え、強く豊かな響きを持つこの楽器で、ドビュッシーのピアノ作品が構想されたとすると、彼の音楽に対する見方も異なってくるように思われます。フランスやスペインの音楽に造詣の深い椎名亮輔さんのお話と、そしてフランス音楽の解釈に新しい風を吹き込む野原みどりさんの演奏を楽しみにしています。
伊東信宏(大阪大学教授、ホール音楽アドヴァイザー)
なぜドビュッシーの作品は劇的に変わったのか?そのとき、彼に何が起こったのか?「印象主義」とピアノをめぐる、二重三重にねじれた関係とは? ドビュッシーのピアノ作品のスタイルの変化の謎を、証拠物件、状況証拠、証人たちを手がかりに、解きほぐして行こうという試み。最重要証拠物件が、アリコートという特殊な装置の付いたブリュートナーピアノであり、今回はその実物の演奏によって、耳による確認作業が実地に行われる。
事件: 1904年、ドビュッシーのピアノ曲のスタイルが劇的に変化する。
証拠物件1: 《ピアノのために》(1902)、《版画》(1904)、《喜びの島》(1905)、《映像第1集》(1905)。
証拠物件2:1904年購入とされるアリコート付きのブリュートナーピアノ。
状況証拠:1903年にエンマ・バルダックと出会い、1904年夏に二人でジャージー島に逃避行(ここでブリュートナーを購入?)。ドビュッシー夫人リリーの自殺未遂事件。
証人1: テスト氏(ドビュッシーの分身)。
証人2: マルグリット・ロン。
証人3: リカルド・ビニェス。
*今後の探索の展開によって、「証拠物件1」の選曲が変化する可能性も残されている。
椎名亮輔(しいな・りょうすけ/講師:同志社女子大学教授)
1960年東京生まれ。東京大学大学院総合文化研究科比較文学比較文化博士課程単位取得満期退学。パリ第8大学音楽学部博士準備課程を経て、ニース大学文学部哲学科博士課程修了。哲学博士取得。東京大学助手、パリ第3大学講師、リール第3大学講師をへて、現在は同志社女子大学音楽学科教授。著書に『音楽的時間の変容』(現代思潮新社)、『狂気の西洋音楽史 — シュレーバー症例から聞こえてくるもの』(岩波書店)、『デオダ・ド・セヴラック — 南仏の風、郷愁の音画』(アルテス・パブリッシング、第21回吉田秀和賞受賞)。主要訳書に、マイケル・ナイマン『実験音楽』(水声社)、ドメル=ディエニー『演奏家のための和声分析と演奏解釈』(シンフォニア)、ジャクリーヌ・コー『リュック・フェラーリとほとんど何もない』(現代思潮新社)などがある。
野原みどり(のはら・みどり/ピアノ)
東京藝術大学在学中、第56回日本音楽コンクール第1位受賞。首席で卒業後、パリ・エコール・ノルマル音楽院に留学。ブゾーニ国際ピアノコンクール第3位入賞(1位なし)、ブダペスト・リスト国際ピアノコンクール第2位入賞、第23回ロン=ティボー国際ピアノコンクール第1位に受賞。J・フルネ、L・マゼール、M・プラッソン、小澤征爾といった内外の指揮者、フィルハーモニア管、ドレスデン・フィルなどのオーケストラと多数共演。日本全国でのソロリサイタルに加え、ベルリン・フィル・ヴィルトゥオーゾ、アンサンブル・ウィーン=ベルリンやヴィオラのG・コセ、W・クリスト、サクソフォンのC・ドゥラングルとの共演など、室内楽やデュオでも活躍している。CDは「ラヴェル:ピアノ作品全集I・Ⅱ 」「月光」などフォンテック、アウローラ・クラシカルなどから7枚をリリースしている。京都市立芸術大学准教授、名古屋音楽大学客員教授。
ブリュートナー Blütner
1913年、ライプツィヒ。85鍵(AAA~a4)。長さ1,890㎜、幅1,510㎜。
イギリス式アクション。総鉄骨、2重交差弦。