大阪市音楽団 インタビュー
4月に民営化、8月のフェニックス「ファミリーコンサート」に出演する 大阪市音楽団の楽団長 延原 弘明さん
掲載日:2014年5月21日
大阪市音楽団の楽団長 延原 弘明さん
「来るべき時が来た」-。2014年4月3日午前10時半。大阪・南港、アジア太平洋トレードセンター内の大阪市音楽団新練習場。挨拶に立った延原弘明楽団長は、集まった市民に語り始めた。1923年(大正12年)創立の日本最古の交響吹奏楽団「市音」は、大阪市の行政改革により同月、民営化された。「自立と挑戦」を掲げ開いた初の公開リハーサルで、「新生・市音」は新たな船出を宣言した。8月3日(日)にはフェニックス主催のファミリー公演への出演が決まっている。舵取り役・延原楽団長に話を聴いた。
「同志の知恵」で活路開拓
「攻め」の運営期す
私が入団した当時の団員数は約50人。それがここ数年、30人に減っていました。「少数精鋭化」は市の財政事情によります。10年ほど前から採用凍結し、楽器によってはパートが欠けたり、公演でもエキストラを入れるので、独自の音色つくりが難しくなったりしていました。民営化を機に、新メンバーを9人入れ、35人で再スタートを切りました。これまでは市職員。格安の出演料で出張公演を重ねてきました。今後は、そうはいきません。市外の営業強化はもちろん、従来は禁じられていた企業との連携・協働や、異なる芸術文化との共演などに取り組んでいきたい。2回だった定期演奏会も3回に増やします。社会に「大阪に市音在り」をシッカリ示し、同時に楽員の士気を高めていきたい。一方で、子どもたち対象の合同音楽鑑賞会や吹奏楽指導、大阪城音楽堂での「たそがれコンサート」といった直営時代からの地域密着事業は続けます。経営は大変ですが、自立のための様々な挑戦を楽員一丸となって展開します。
大阪・南港ATCに新設された練習場での公開リハーサル=2014年4月3日
「自主運営」の気風
ウチの気風の特徴に、「楽員による自主運営組織」が挙げられます。4月、音楽監督に就任してくださった作曲家で指揮者の宮川彬良さんに今も、しばしば驚かれることがあります。リハーサル前後に楽員がパソコンで書類を作成したり、請求書を書いたり、電話で出演交渉したりしている。通常の、職業オーケストラでは「演奏する楽員」と「マネジメントする事務局」の役割分担が明確なケースが大半。でも市音は、新人も含め、全楽員が運営に直接、携わっています。自分たちの進路は自分たちで探る。そんな気風が音楽にも表れる。カリスマリーダーの下、楽員が粛々(しゅくしゅく)と演奏するというよりも、自分たち自身で意思疎通し合い、主体的に、自発的に、個性的表現を創る。それが市音の伝統なんです。リーダー・フォロワーの関係で動くよりも「パートナーシップ」で動いているオーケストラ。ですから私の役割も「調整役」。去年秋、梅田グランフロントで行った「フラッシュモブ」(通行人を装った楽員がいきなり合奏を始める、ハプニング的な演奏プロジェクト)はじめ、楽員の知恵で「活路」を拓いていきたい。また、若い事務局員にもバリバリ頑張ってもらいます。
「吹奏楽ライブ」に
ザ・フェニックスホールはふだん、ピアノやヴァイオリンのリサイタル、弦楽四重奏や木管五重奏のコンサートが行われている「室内楽の殿堂」ですよね。今回、私たちはラテンの名曲「エル・クンバンチェロ」はじめ、吹奏楽のダイゴ味をお伝え出来るよう、プログラムを編みました。編成は40人ほど。打楽器も多く、フルトーンで奏でますから、随分にぎやかになるでしょう。いつものフェニックスの舞台とは違う、迫力あふれる「吹奏楽ライブ」だと思って大いに楽しんでいただきたい。お会いできるのを楽しみにしています。(談)
のぶはら・ひろあき
石川県出身。大阪音楽大学でクラリネットを学び、同大卒業後、フリーランス活動を経て1981年、大阪市音楽団入り。主任や副団長を経て2013年4月から団長。クラリネットについては「ソロも伴奏もオールマイティ。ジャズでも多用され、時には暴力的表現も可能」と話す。趣味はワイン。物腰も柔らかく、楽員らの信望は厚いが、団の転機に臨み〝パンチ〟の利いた手腕が期待される。兵庫県西宮市で奥様と2人暮らし。59歳。
90年の歴史を誇る日本のトップ吹奏楽団。
「しおん」が贈る迫力のステージ!
大阪市音楽団ファミリーコンサート
2014年8月3日(日) 14時開演
入場料¥2,000円(指定席)、友の会¥1,800円
学生¥1,000円(限定数ではございません。ザ・フェニックスホールチケットセンターのみのお取り扱い)
※小学生以上からご入場いただけます。
チケットのお問合せ・お申し込みは
ザ・フェニックスホールチケットセンター
TEL 06-6363-7999
(土・日・祝日を除く平日の10時~17時)
[出演]
指揮 田中弘(副楽団長)
演奏 大阪市音楽団
[プログラム]
F・メンデルスゾーン:吹奏楽のための序曲
G・ビゼー:歌劇「カルメン」より 前奏曲、アラゴネーゼ、ハバネラ、闘牛士の歌
藤田玄播:幻想曲「幼き日の思い出」~『ずいずいずっころばし』の旋律によるパラフレー ズ~
真島俊夫:コーラル・ブルー〈沖縄民謡「谷茶前」の主題による交響的印象〉
宮川彬良:Fun,Fun,Fantastico!
J・ドッド:ミッキーマウス・マーチ [楽器紹介]
L・アンダーソン:トランペット吹きの休日
服部隆之:「THE世界遺産」テーマ曲『Les enfants de la Terre~地球のこどもたち~』
真島俊夫編:ディズニー・メドレーⅢ
R・エルナンデス:エル・クンバンチェロ
大阪市音楽団(おおさかしおんがくだん/吹奏楽)
大阪市音楽団は1923年(大正12年)に誕生以来『市音(しおん)』の愛称で市民の楽団として親しまれている交響吹奏楽団。市民の情操を豊かにするために、吹奏楽曲、クラシック曲からポピュラー曲まで誰もが楽しめるコンサートを展開している。園児・児童を対象とした「幼稚園・小学校合同音楽鑑賞会」は、音響、照明、舞台設備の整ったホールで生の音楽にふれる機会を提供することで、情操教育の効果をより一層高めている。依頼演奏においては、「宮川彬良&大阪市音楽Dahhhhn!!」「全日本吹奏楽コンクール課題曲参考演奏の録音・録画」「センバツ高等学校野球大会入場行進曲の録音」「大相撲春場所千秋楽での式典演奏」および各都市での演奏会や吹奏楽講習会など、多方面からの要望にも応えている。これまでに3度の大阪文化祭賞、日本民間放送連盟賞、日本吹奏楽アカデミー賞演奏部門賞、大阪芸術賞を受賞。2003年より秋山和慶氏が特別指揮者・芸術顧問に、2010年からは宮川彬良氏がアーティスティック・ディレクターに就任。大阪市直営廃止に伴い、2014年4月より音楽監督に宮川彬良氏を、芸術顧問に秋山和慶氏を迎え「一般社団法人大阪市音楽団」として活動開始。
大阪市音楽団⇒http://www.shion.jp/