Prime Interview 石田泰尚さん

掲載日:2025年3月4日

この日、ザ・フェニックスホールは、ヴァイオリニストの石田泰尚率いる「トリオ・ジャパン」のコンサート。昨年、石田が率いる別ユニット「石田組」が、日本武道館に8300人を集めて話題となっていただけに、ザ・フェニックスホール300席のコンサートチケットは即日完売のプラチナチケット状態。演奏に加え、演出にも細心の準備を怠らない「石田組」とは違い、「トリオ・ジャパン」は笑いを排除したピアノトリオによるクラシックコンサート。「皆さん、クラシックの演奏をちゃんと聴くのかな?」と猜疑心を持ちながら客席の様子をうかがっていると、満員のザ・フェニックスホールは集中力と緊張感で満たされてビックリ! 渾身の演奏には、研ぎ澄まされた集中力で聴衆は応えるものなのだと、大いに反省。
カーテンコールで石田泰尚が「今年10月、ここで僕のリサイタルをやります!」と話すと、客席からは「キャーッ!」と歓声と拍手が起こり、この瞬間にリサイタルのソールドアウトが約束された。リサイタルのチケットは、プラチナチケットになることだろう。そして、コンサート終了から30分後、疲れた様子も見せずに、石田は我々の前に姿を現し、リサイタルに向けた抱負を語ってくれた。
(磯島浩彰 音楽ライター)
                            

 

 

石田泰尚、ザ・フェニックスホールに見参!

 

 

 

 

 

――ザ・フェニックスホールは昨年に次いで2度目ですね。ホールの印象は如何でしょうか。

 

昨年初めてこのトリオで演奏させて頂いて、響きやステージと客席の距離感など、僕は凄く好きですね。音楽に集中できるホールです。今日もここで演奏出来るのを楽しみにしていました。来年度、素晴らしい企画をご提案頂いて、今から楽しみにしています。

 

 

――その話をさせていただく前に、いくつかお聞きしてもいいですか。昨年、日本武道館で石田組のコンサートをやられて、8,300人が集まったそうですね。8,300人の景色と、本日のように300人の景色では見える風景が違うと思うのですが、その点は如何でしょうか。

 

お客様の数が多い、少ないは関係ありません。僕の思いとしては、お越し頂いたお客様には、必ず喜んで帰っていただきたい。今日お越しのお客様の中には、笑いも演出も盛り込んだ石田組のコンサートをきっかけにご来場された方もいらっしゃるかもしれません。今日はピアノトリオによるクラシックコンサートで、笑いの要素はありませんが、弦楽器の愁いを帯びた音色やピアノの迫力を、ステージから近いこの距離で体験してみて、「ピアノトリオも良いなぁ」と思ってもらいたかったのです。今日のお客様は、凄く集中して聴いてくださいました。

 

 

――集客が厳しいと言われるクラシックのコンサートで、日本武道館に8300人が来場した。もちろんこれは、サントリーホールやフェスティバルホールを満杯にして来たという実績を踏まえてのことですが、この後、さらに大きなホールでのコンサートを目指されますか。

 

日本武道館に8,300人が集まったというのは素直に嬉しかったです。コレは自分の財産だと思いました。しかし、あまりその事に満足し過ぎると、そこでチャレンジする気持ちが止まってしまう。新たな目標として、日本武道館よりもっと大きなところでやりたい! やらないといけない!と思いました。

 

 

――ロックのコンサートだと、日本武道館の次はアリーナという事になるのでしょうか。そしてスタジアム? 野外? そもそも石田さんが日本武道館を狙おうと思われたキッカケは何ですか。

 

石田組は2014年の結成です。毎年コンサートをやっていくうちに少しずつ集客が増え始め、「このまま、サントリーホールを満杯にしたい!」と言っているうちに、サントリーホールのソールドアウトが3、4年続いたのです。その時に「夢みたいな話だけど、もっと大きなホールでやりたいね。例えば、日本武道館とか」とメンバーと話をしていたところ、一昨年、キョードー東京の社長さんが来られて「石田君、来年石田組が10周年でしょう。日本武道館やろうよ! 押さえるから」と言ってくださったのです。そこから夢の実現に向けて進みだしました。もちろん不安もありましたが、これまで日本中、いろんなところで手を抜かず、真剣にコンサートをやって来たから、結果的に全国から8,300人もの方がお越しになった。もう感謝しかありません。こうなったらアリーナ、やりたいです。とにかく大きな所でやりたい。あの8,300人の景色を見たら、そう思って当然だと思います。それほど凄い景色でした。

 

 

――石田組以外にも色々な形態のアンサンブルをやっておられますし、神奈川フィルの首席ソロ・コンサートマスターと京都市交響楽団の特別客演コンサートマスターもやられている。年間の公演数はどのくらいになりますか。

 

この間、数えてみたのです。1日2公演ある演奏会を2と数えたら、なんと218本でした。オーケストラからソロリサイタルまで、色々なユニットでやっているので、譜読みだけでも大変ですし、「いつ練習しているの?」と仲間からも聞かれます。短時間で集中し、要領良くを心掛けていますが、正直きつくないと言えば噓になります。でも、元気なうちにやれるだけやろうと思っています。原動力ですか? 記憶に残るヴァイオリニストになりたい、という事でしょうか。「そういえば、日本武道館を一杯にした、石田っていうヴァイオリニスト、いたよねぇ⁈」そんなヴァイオリニストなりたいと思っています。

 

 

――素敵な話ですね。話題をザ・フェニックスホールに戻します。ホールオープンから30周年と云う事で、ヴァイオリニスト3人のリサイタルを企画されるそうです。色々な条件を考慮し、決まったのが郷古廉さん、フォルクハルト・シュトイデさん、そして石田泰尚さん。この3名を選出する上で、大事なポイントがオーケストラのコンサートマスター経験者という事だそうです。

 

そうだったのですか。世界と日本を代表するオーケストラのコンサートマスターとご一緒出来て光栄です。10月のリサイタルのプログラムは、お二人と被らないように選曲しました。モーツァルトのソナタ第25番で始まり、ブラームスのソナタ第3番で終わるドイツ・オーストリアプログラムと思いきや、途中フォーレのフランスや、スメタナのチェコを経由するワールドワイドなプログラムです。例えば、モーツァルトとフォーレでは、ヴァイオリンの弾き方が全然違います。そういう点もチェックしてお聴きください。

 

 

――そのビジュアルとヴァイオリンの音色のギャップが石田さんの最大の魅力だと思いますが、美しい音を奏でるためには相当練習をされていると思います。

 

もちろん練習はしています。全ての話は、自分がヴァイオリンを上手く弾けるという前提の上に成り立っていますので。時間は限られますが、集中して効率的にやっています。

 

 

――石田さんがお手本にしていたり、好きなヴァイオリニストはいらっしゃいますか? ぜひ教えてください。

 

ナージャ・サレルノ=ソネンバーグとジュリアン・ラクリンが好きです。公演を追いかけたり、音源を買い揃えるようなことはありませんが、ちょっと時間が出来た時などにCDを取り出して来て「いいなぁ!」なんてことはありましたね。素敵なヴァイオリニストだと思います。

 

 

――それでは最後に、リサイタルに向けたメッセージをお願いします。

 

素晴らしいヴァイオリニストに混じってリサイタルを全力でやらせて頂きます。興味深いプログラムになったと思います。10月1日は、ぜひザ・フェニックスホールにお越しください。お待ちしています。