アッレ・メッレルさんインタビュー

2011年2月22日(火) 「アッレ・メッレル・バンド 異文化のアマルガム」公演リーダー アッレ・メッレルに聞く

掲載日:2010年11月29日

(構成 ザ・フェニックスホール)

「異人」同士 心開いて創造


―まず、あなた自身の音楽キャリアを教えて下さい。

元々はジャズのトランペット奏者をやっていました。1979年にギリシャのブズーキ(リュートタイプの伝統的なギリシャの楽器)奏者、クリストス・ミトレンシスに出会い、彼の音楽に大変惹かれました。私はブズーキを習いはじめ、ギリシャでツアーをしたり、旅行をするうちに、根強く生きる伝統音楽の深い力に気付きました。そこで、自分自身の伝統を見つめ始めたのです。

―その当時、スカンジナビアでは、伝統音楽はどのような状況でしたか。

流行のポピュラー音楽に追いやられたジャンルになってしまっていました。ところが、ギリシャで出会った伝統音楽は古くて同時に新しく、後ろを振り返りながらもしっかりと前を見つめているものでした。この違いが、私にとって、自国の伝統音楽の役割を変えるという挑戦に向けた、偉大なインスピレーションの源になったのです。伝統音楽の現代的な形を創り出し、ブズーキを伝統音楽に取り入れるという野望を持ってスウェーデンに帰り、古い伝統音楽を勉強しました。ブズーキと同じように伝統音楽に取り入れるべく、マンドーラ(リュートから派生した楽器)の演奏も始めました。それ以来、私は伝統的なスカンジナビア音楽をミュージシャンとしての自分の出発点としたのです。

―このバンドを立ち上げようとした動機は何ですか。

1998年に、スウェーデン政府からビッグバンドを結成するという夢をかなえるための助成金を受けることができ、最初は「ストックホルム・フォーク・ビッグ・バンド」という、14人編成のバンドを設立しました。通常、音楽バンドを結成しようという時には自分と同じバックグラウンドを持つミュージシャンを探すものでしょう。しかし、私は異なる音楽が出会う可能性に魅力を感じていましたので、異なった文化的背景を持つメンバーを集めました。ストックホルムのスウェーデン放送ホールでの初舞台は、忘れられない思い出です。その後、現在のアッレ・メッレル・バンドを2001年にドイツのグレイフスヴァルトで結成しました。

―その折はアーティストをどのようにして選定しましたか。グループ化を試みる中で、何か障害や軋轢(あつれき)はありましたか。

スウェーデンにはたくさんの偉大な移民のミュージシャンがいます。バンドメンバーとは皆とてもうまくいき、とてもオープンでクリエイティヴな雰囲気を楽しみながらグループを結成でき、とても嬉しかった。今でもこのメンバーと一緒にやる毎日が、いとおしくて仕方ありません。マリア・ステッラス、ラファエル・シダ・フィザル、ママドウ・セネは結成当初からずっと変わらないメンバーです。

―異なる音楽を「一緒にする」ために、どのような手法を使うのですか。

私は強い個性を持ったメンバーで構成するグループのリーダーです。異なる音域やリズムを理解するために、かなり多くの時間を費やして勉強してきました。音域や多様なリズムを組み合わせるには多くの手法があり、今でも日々これと格闘しています。

―このバンドの曲は、どのようにして作られるのですか。

作曲はほとんど私が手掛けます。テキストはバンドメンバーの誰かのレパートリーから伝統的なテーマを使い、マリアかママドウに助けてもらってギリシャ語か西アフリカの言語に訳されます。時には薫りづけ程度であったり音楽の引用であったり、時には元の歌そのものを全部使うこともあります。

―メンバーはどんな練習をどれくらいの頻度で行うのですか。

メンバーはスウェーデン各地に散らばって住んでいるため、リハーサルはそんなにたくさんはできません。1年に4、5回集まり、私が前もって作曲して、修正しておいた曲を2日ほどリハーサルします。いったんリハーサルが始まると、バンドメンバーが音楽に大きな変化を付け加えていきます。サウンドチェックの時間や夜遅くのホテルでの即興演奏を新しい素材探しに使うこともよくあります。

―ダンスの位置付けはどのようなものですか。

私たちはダンスの伴奏をするバンドではなく、あくまで音楽を主体とするバンドです。ママドウとマリアは演奏中に踊るのが大好きですが、それは通常、ステージ上で自然と湧き上がってくる表現なのです。

―これまで、どのような場所で演奏してきましたか。

スウェーデン、イギリス、フランス、カナダ、ノルウェー、オーストリア、ドイツ、イタリア、ギリシャ、フィンランド、中国、ポーランド、セネガル、スイスです。

―国や地域によって、聴衆の反応にどのような差がありましたか。また、地域の社会的背景による違いがありましたか。例えば、人種的、文化的、宗教的に比較的同一性の高い場所と、そうでない場所とでの違いはありましたか。

たとえばセネガルでは、聴衆は音楽を気に入ると踊り始め、ステージにあがってきます。中国人は皆、楽器にとても興味を持っていました。でも人間というものは基本的に、世界中どこでもそれほど変わらないと思います。

―日本での反応はどのようなものだと思いますか。

これまでの日本ツアーの経験から、私は聴衆にはとても期待しています。集中して耳を傾け、惜しみない拍手をしてくれる、素晴らしい聴衆ですね。

―世の中は今、あなたたちが体現しているような「多文化社会」を志向していると思いますか。バンドの活動を通じて、どのように感じますか。

違う国に人が旅をして、音楽的なアイディアを交換し合うというのはとても自然なことだと思います。実際、私たちが考えている以上に歴史上でもそのような事が起きてきました。しかし、アッレ・メッレル・バンドは多文化共生のために音楽をやっているわけではありません。私たちは、ただ自分の好きな音楽を作っているのです。アレ・メッレル・バンドのコンサートを見に来るとき、多文化の意味や価値について考える必要などないと思っています。音楽を楽しんでほしい、ただそれだけです。大阪でも、そんな、音楽を愛する人々に来てほしいです!

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構成協力:ハーモニーフィールズ)


■公演情報

「アッレ・メッレル・バンド 異文化のアマルガム」は2011年2月22日(火)19:00開演。料金は一般4,000円、学生1,000円(限定数、ザ・フェニックスホールチケットセンターのみのお取り扱い)。指定席。チケットのお求め、お問い合わせは同チケットセンター(電話06-6363-7999 土・日・祝日を除く平日の10:00~17:00へ)。