インタビュー♪ ムジカ・レアーレ-ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ムジカ・レアーレ - ロイヤル・コンセルトヘボウ管 メンバーによる室内楽 5月1日( 金) 午後2時

掲載日:2015年2月12日

欧州を代表するオランダの名門オーケストラ、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(*)。優れた響きで知られる、アムステルダムの「コンセルトヘボウ」(オランダ語でコンサートホール)の座付きで、ハイティンクやマリス・ヤンソンスといった名指揮者ともども度々来日、ファンも多い。その主要楽員による室内アンサンブルが関西デビューする。「ムジカ・レアーレMusica Reale」。楽団の元ヴィオラ副首席奏者ピーター・ソコレ氏が主宰する。2007年以来、毎年7月に伊トスカナ地方のモンタルチーノで音楽祭を開催するほか、アムステルダムでも演奏。公演ごとに編成を替え、今回はフルート、クラリネットと弦楽5部で来阪し、ドヴォルザークやブラームスの名作を奏でる。ソコレ氏に設立の経緯や特性を聴いた。

「名門」の響き、室内楽で

 

ディレクター ピーター・ソコレ氏に聴く

 

-結成の契機は。
私は元々、コンセルトヘボウ管の楽員で、ヴィオラセクションの副首席を20年近く務め、2008年に退職しました。実は体を傷め、演奏活動から退かなければならなくなったのです。でも音楽活動に携わり続けたい。その気持ちはとても強く、このアンサンブルを立ち上げる決心をしたのです。退職前年の07年からイタリアのトスカナにある自宅の近くで、室内楽の音楽祭を始めることにしました。

 

-オーケストラの楽員を集めて、どうして「室内楽」なんですか。
室内楽は、あらゆる音楽家にとても重要なジャンルだからです。クラシック音楽の分野で最も偉大な、また重要な作品は、室内楽のために作られています。それに取り組むことでオーケストラの楽員は、一人の音楽家としての個性を維持できるし、交響曲や管弦楽曲、あるいはソロ作品などあらゆる音楽に向かい合う際にも、自力で音楽を深められる力を養えます。実際、コンセルトヘボウ管では、実に多くの楽員が、さまざまな作品を演奏するアンサンブルで活動しています。楽員すべてが室内楽演奏に携わっているのです。

 

-なるほど。アンサンブルとして毎年、概ねどんな活動をしていますか。
イタリアの音楽祭のために立ち上げた経緯から、7月の音楽祭出演の活動が第一です。このほか、コンセルトヘボウ管や個々の楽員の予定を勘案し、不定期ながらアムステルダムでも公演を重ねてきました。いまは、このアンサンブルの国際的な評価を高めたい。今回の公演もその思いを込めています。

来日する「ムジカ・レアーレ」のメンバー。撮影場所は、コンセルトヘボウ内の「コンダクター・ホワイエ」。
壁面には楽団ゆかりの指揮者の肖像画が掛かっている。左から、リッカルド・シャイー(1953-、1988-2004首席指揮者)、コルネリス・ドッパー(1870-1939、ウィレム・メンゲルベルク時代の第2指揮者)、ヘンリ・ヴィオッタ(1848-1933、1888年4月11日のコンセルトヘボウのこけら落とし公演の際の指揮者)、ベルナルド・ハイティンク(1929-、1961-1988首席指揮者、99~名誉指揮者)。

同僚ならではの緊密さ

 

-プログラムに応じ、出演者が替わりますね。どう決めるのですか。
コンセルトヘボウ管の楽員から、選ぶのです。およそ120人の楽員はすべて、ムジカ・レアーレのメンバーになり得る。プログラムについては、主催者の意向を聴き、予算も踏まえ、楽員をピックアップし、その上で概ね、私が素案をつくります。出演する楽員との話し合いで、それを磨き上げていく感じですね。

-アンサンブルの特性は?
出演者の音楽性や技巧の高さは、言うまでもありません。加えて、コンセルトヘボウ管そのものが体現しているような、澄んで美しく、ヴァラエティに富む響きが、最大の特徴です。この響きはむろん、世界に比類のない、コンセルトヘボウというホールが醸す音色を見事に反映しています。演奏家同士が音楽性を交わして醸し出す、緊密な合奏も素晴らしい。

 

-演奏家からマネジメント業への転身は、きっと大変だったでしょう。
室内楽はこの世にゼッタイ必要な音楽。その思いに比べたら、活動の継続・発展や公演にかかわる様々な雑事は、全く苦になりません。出演者は皆、優れた演奏家。お互いの音楽性で交流し、素晴らしい演奏をしてくれます。室内楽を通じ、世界でも指折りの、高い評価を得てきたコンセルトヘボウ管の特性をさらに発信したいと思ったのです。日本の聴衆は室内楽について、もっと多く知識を持ちたいと望んでいるように感じますし、最高レベルの演奏にもっと触れたい、と望んでいるように私は感じています。大阪でぜひ、お楽しみ頂きたいですね。

(*)ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
オランダ・アムステルダムの音楽堂「コンセルトヘボウ」に本拠を置くオーケストラ。1888年の開館と同時に専属団体として活動を始めた。ウィレム・メンゲルベルクが首席指揮者を務めた時代に国際的な注目を浴びるようになり、ベルリンフィル、ウィーンフィルともども、欧州を代表する名門楽団として親しまれている。R・シュトラウスやマーラー、シェーンベルクやストラヴィンスキーも指揮を執り、現在でもとりわけマーラーの作品演奏で定評がある。現在の首席指揮者はマリス・ヤンソンス。