渡邉規久雄さん(ホール音楽アドヴァイザー)について

渡邉規久雄(わたなべ・きくお) ピアニスト

林美奈子にピアノの手ほどきを受けて以降、林秀光、梅谷進、アベイ・サイモン、ジョルジュ・シェボック、スタニスラフ・ネイガウスに師事。同時に室内楽をヤーノシュ・シュタルケルに、作曲法を野田暉行に師事し、1974年インディアナ大学を成績優秀賞(With Distinction)で卒業。ピアノ科助手を務め1976年に同大学院を卒院。
1976年、日経ホールにおけるデビュー・リサイタル以降、日本フィル、東京交響楽団、京都市交響楽団、仙台フィル等の定期演奏会に出演。国際交流基金の音楽特使として南米に、ヴァイオリニストの千住真理子と中央アジアのウズベキスタン、キルギス、カザフスタンへ、フィンランドの日本大使館の招きによりヘルシンキで寺田悦子とのデュオ・リサイタル、ハバロフスクでの極東交響楽団との共演、国内でもショパンのポロネーズ全曲によるリサイタル、彩の国さいたま芸術劇場「100人のピアニスト・シリーズ」、東京文化会館小ホールでシューベルトの最後の3曲のソナタによる演奏会やオール・シベリウス・プログラムによるリサイタルなど、精力的に演奏活動を行う。

近年も、サントリーホールで寺田悦子とともに小林研一郎指揮日本フィルとモーツァルトの2台ピアノのための協奏曲を共演、東京、サンクトペテルブルク、モスクワでラフマニノフの協奏曲第2番、ラトヴィアの首都リガや、東京・名古屋・大阪など国内各地で寺田悦子とのデュオ・リサイタルを行う。2014年、リスト、シベリウス、ラフマニノフ作品によるリサイタルを開催し、荘厳なピアニズムを聴かせたと絶賛された。
北欧、特にフィンランド音楽に造詣が深く、シベリウス・プログラムでのリサイタルのライブCD3枚をオクタヴィア・レコードから、「シベリウスのヴァイオリン作品集Ⅰ・Ⅱ(ヴァイオリン:佐藤まどか)」をALMレコードから発売。TRITONレーベルからリリースされた寺田悦子との2台ピアノ曲集「デュオ・ピアノで聴く“春の祭典&ラフマニノフ”」は、レコード芸術特選盤に選ばれるなど高い評価を得る。
シベリウス生誕150年の記念の年である2015年は、大阪と東京でオール・シベリウス・プログラムによるリサイタルを開催(東京公演はNHK-FMで放送)、NHK-BSプレミアムのクラシック倶楽部『シベリウスの室内楽の世界~生誕150年~』に出演と、シベリウスのピアノ音楽の第一人者として大いに活躍、こうした長年の功績により2015年12月にフィンランド・シベリウス協会から歴史と伝統ある《シベリウスメダル》を授与された。
2012年から毎年8月にはドイツで開催されているインターハーモニー音楽祭にたびたび参加し、演奏とマスタークラスを行う。武蔵野音楽大学ピアノ科教授。

ピアニストとしての視点で

渡邉規久雄

音楽アドヴァイザーをお引き受けするにあたり開館以来のフェニックスホール主催コンサートの歩みを拝見し、あらためてこのホールのクオリティーの高い企画性と着実な歩みに大変感銘を受けています。大阪の梅田のど真ん中という恵まれた立地に335席の贅沢な空間で厳選されたコンサートが20年以上提供されてきたことは、確実に関西の音楽界の発展の一端を担ってきたホールだと言えます。最近は日本各地で音楽ホールが増え、独自の企画を打ち出そうとしていますが、一方でクラシック音楽の聴衆が増え続けているかというと、必ずしもそうではないのが現状です。オーケストラの運営もそうですが、ホールを運営する側の厳しい現状を我々演奏家は実感しています。しかし音楽文化に携わる者が知恵を出し合って、時には他の分野の人達とのコラボレーションをとおして新しい企画が生まれたり、既成概念から外れたところに思わぬ魅力が発生することがあるのですね。例えば平日の午後に聴衆が集まるのか?と危惧していたティータイム・コンサートが好評だということも新鮮な発見でした。音楽ホール、演奏家、そしてそこに集まる聴衆が一体となって作り出すのが音楽文化だとすれば、若い才能の発掘と育成も大切ですが、中堅、或いはベテランと言われる演奏家達の地道な活動にも注目していくことも欠かせない要素だと思います。今井信子さんや伊東信宏さんという素晴らしいアドヴァイザーのもとに監修されたフェニックス独自の企画とバランスの取れたコンサートを踏襲しつつ、ピアニストである自分の立場から今までになかった企画も提案していきたいと思っています。
聴衆の皆様からのご意見もどしどしお寄せいただきたいと思いますが、変わらぬご支援を何卒よろしくお願いいたします。